SS-MCLIRSシステム事例報告

糸魚川市能生地区 海洋公園風力発電所、徳合風力発電所設置後5シーズンの経過、考察

風力発電所全景写真

背景

  1. 2003年11月に海洋公園風力発電所、徳合風力発電所の施設に米国LEC社のSS-MCLIRSシステムを設置。
    設置以前は、落雷事故によりブレードの破損、飛散、塔の捻れ等により壊滅的な被害を受けていたが、設置後はブレード、制御機器等の被害は皆無である。(風車施設本体)
  2. 2004年10月ロゴスキーセンサー取り付け、以前にSS-MCLIRSに落雷痕跡が数多くある。(2004年3月経過報告写真参照)
  3. 強力な誘雷針であるSS-MCLIRSには徳合風力発電所に於いて下方よりの落雷痕跡が確認され、データーも記録されている。
    この事は海洋公園風力発電所に於いても同様である。
  4. SS-MCLIRSシステムによる風力発電の落雷対策は世界で始めてであり、日本風力エネルギー協会誌である、風力エネルギー第79号に落雷対策の成功例として詳しく紹介された。

S-MCLIRS全景、経過、記録

S-MCLIRS経過

2003年11月海洋公園、徳合風力発電施設にS-MCLIRSシステムを設置
2004年10月海洋公園、徳合風力発電施設のS-MCLIRS鉄塔にサージカウンター(ロゴスキー方式、7.5KA~150KAの電流値、極性、日時分秒)200回記録機能ありを設置
2005年10月6~7日DLP10KA 2基、HDLP60KAにチェンジ、CR配列替え(海洋公園、徳合)
2005年12月21日海洋公園、徳合風力発電施設のS-MCLIRS鉄塔にサージカウンター(ロゴスキー方式、500A~10KAの電流値、極性、日時分秒)200回記録機能ありを設置
2007年12月21日隣接する無線中継所の受信盤焼損、風力テレコム2関連NTT保安器及び1次側信号ケーブル3スパン焼損

サージカウンターの記録

徳合風力発電所
2005年:1月31日15時:6分18秒+32KA
2006年:1月10日:23時56分00秒-1.7KA
2006年:3月13日:21時23分40秒-3.4KA
2006年:8月7日:17時31分45秒-21KA
2006年:8月7日:17時38分05秒-10.5KA
2006年:8月12日:9時32分03秒+0.6KA
2006年:11月30日:23時14分58秒-0.5KA
2006年:12月29日:14時26分01秒+2.2KA
2007年:2月15日:13時55分07秒+0.5KA
2007年:5月18日:20時3分26秒-7KA
2007年:12月14日:6時42分29秒+7KA
2007年:12月14日:6時53分55秒+24KA
2007年:12月21日:5時59分47秒+35KA
海洋公園風力発電所
2005年12月20日 9時12分06秒-9.3KA
2005年12月24日 1時53分36秒+17KA
2005年12月24日 1時55分33秒+10.5KA
2005年12月24日 1時57分35秒-26KA
2005年12月24日 1時59分32秒+0.5KA
2005年12月24日 2時00分06秒-13KA
2005年12月24日 2時13分44秒-10.5KA
2006年 3月31日 2時11分38秒-10.5KA
2006年 3月31日 2時13分44秒-5.2KA
2007年12月30日17時32分50秒+1.6KA

スプライン写真、考察、測定、総論

徳合風力発電所SS-MCLIRSに於いてスプラインが溶融、焼き戻しにより5本変形

考察1

a)これはカウンター記録12月14日と21日の+24KAと+35KAに起因するものと思われる。
※12月21日隣接する携帯電話中継所、受信盤焼損

考察2

a)接地極が別々であり電位差破壊と思われる。

対応策案

a)SS-MCLIRSの接地を共用し受信盤直近にCR(ケミロット)接地極を設ける。
b)受信盤にアレスター、DLP60KAを取り付ける。
※NTT保安器、1次側信号ケーブル焼損、テレコム2フューズ溶断

考察3

a)接地よりサージ電流が立ち上がり、保安器、ケーブルを焼損したと思われる。

対応策案

a)保安器直近にCR設置極を増設する。
b)保安器の2次側にDLP60KAを取り付ける。

総合考察

以前にも前記のような事故があり、今回と比較するとサージ電流が+30KAを越すと個の様な被害がでる。
一般的には落雷の衝撃波はμsであるが冬季雷ではmsが記録されているので、電荷量に起因するものと思われる。
※徳合風力発電所に於いてIPG架台(SUS製)の焼付け痕跡フランジ留めボルトの腐食

考察4

a)今回12月に+24KA,+35KAの大きなサージ電流の突入があり、ジュール熱による焼付け痕跡と見られる。
尚SUSに関しては表面の変色だけで機能的には問題が無い。

対応策案

a)フランジ取り付けボルトの交換
※SUSボルトは不可

測定

海洋公園風力発電所
a)鉄塔先端IPG端子~第一CR間導通テスト

導体目視点検 ――― 良好
音声併用テスター ――― 良

b)CR(ケミロット)点検
塩基化合物50mm~350mm消耗
6本補充

c)接地測定
(2008年 3月) ――― 0.040Ω 2mA 2KΩ設定
(2007年 4月) ――― 0.240Ω
(2006年 4月) ――― 0.327Ω
(2005年 4月) ――― 0.285Ω
(2004年 3月) ――― 0.207Ω
(2003年11月) ――― 0.239Ω 接地工事直後

d)サージカウンター点検

目視点検

カウンター本体損傷無し
データーチェック ――― 良
カウンター収納BOX波浪により上部破損

徳合風力発電所
a)鉄塔先端IPG端子~第一CR間導通テスト

導体目視点検 ――― 良好
音声併用テスター ――― 良

b)CR(ケミロット)点検

塩基化合物50mm~300mm消耗
6本補充

c)接地測定

(2008年 3月) ――― 0.097Ω 2mA 2KΩ設定
(2007年 4月) ――― 0.650Ω
(2006年 4月) ――― 0.620Ω
(2005年 4月) ――― 0.620Ω
(2004年 3月) ――― 0.596Ω
(2003年11月) ――― 0.569Ω 接地工事直後

総合考察2

a)今回の5シーズン経過後の点検を終えて、SS-MCLIRSの誘雷は確実にあるが、ブレード、及び風車本体には落雷は皆無である。(ブレード点検写真参照)
これはSS-MCLIRSの誘雷力2500~2800Kgfと、風車の1.8Kgf~2.2Kgfとの歴然たる違いと思われる。この事は日本海地方の冬季雷対策に、確立したシステムと立証したものと考える。

b)SS-MCLIRSスプライン変形について
電流値の大きさも起因する事は明白であるが、落雷時のピーク継続時間でのエネルギーの大きさが最大の損傷差となると思われる。
夏季雷は50μs~100μsと言われているが、冬季雷に於いては500msとの継続時間も測定され、この様な冬季雷特性が+32,+24,+35KAの時に現れ、ジュール熱により焼き戻りに成ったと思われる。

c)設置場所の地形の比較
海洋公園風力発電所は海抜5m位の平坦な地形に、風車は設置されている。
徳合風力発電所は海岸から100m以内の平坦地から100mの断崖の上に設置され、海抜は105mである。
風車のブレード先端までは共に47mであり、SS-MCLIRS先端は徳合が55.3m、海洋公園が52.3mである。
乱気流は地形により発生が大きく違い、急峻な地形のほうが落雷発生が多い。
この事はサージカウンターの記録からも分かる。
しかもサージ電流値も大きく、データー的に見ると徳合に於いては3回のブレード損傷の可能性が指摘される。
しかしSS-MCLIRS設置以前に於いて、両施設ともブレード破壊の大事故を経験している。
この様な気象条件がどの様な元で起きたか今後の課題である。

総論

2008年度は落雷回数が多くなる傾向にあった。
付近の避雷針には12月30日には+44KAをピークに1日に8回の落雷を記録している。
日本海の海水温が、1℃~2℃高くこの様な状態が続くと蒸発する水蒸気が非常に多くなり、冬季雷の多発につながると思われ、尚一層安全対策が求められる。
対策の一環としてのSS-MCLIRSシステムの検討を求める。

ブレード写真、05年SS-MCLIRS誘雷痕跡写真

能生海洋公園風力発電所 (2008年3月17日撮影)

徳合風力発電所 (2008年3月17日撮影)

徳合風力発電所 05年IPG誘雷痕跡

SS-MCLIRS設置以前の2施設落雷被害写真

海洋公園風力発電所落雷被害写真


徳合風力発電所落雷被害写真

両施設SS-MCLIRS配置図